オンプレミス — 自分でハードを持つ
📖 このページのゴール:はしごのいちばん下=「全部自分でやる」オンプレミス(自社で機械を持って動かすやり方)が、何をどこまで背負うのかを腹落ちさせる。向く人・向かない人、コスト・セキュリティ・メンテの手触りまで。 ← 目次・はじめにへもどる
オンプレミス(on-premises=「自分の敷地内で」の意味。略してオンプレ)とは、サーバー(コンピューター)の機械そのものを自分で買って、自分の場所に置いて、自分で動かすやり方です。クラウドが当たり前になる前は、これが唯一の選択肢でした。
🍕 ひとことのたとえ
小麦粉から、家で、ぜんぶ自分でピザを作る。
生地をこね、ソースを煮て、オーブンを買って、焼いて、後片付けまで——台所も材料も道具も全部自分のもの。誰にも頼らない代わりに、何かあったら全部自分で対応します。オーブンが壊れたら自分で修理、電気代も自分持ち、深夜に焦げても起きるのは自分。
🟢 自由度は最強。でも「自由=全部こっちの責任」でもある、というのがオンプレの本質です。
🧩 どこまで自分で、どこからお任せ?
結論:お任せできる部分は、ありません。下から上まで、全レイヤー(層)が自分の担当です。
(責任共有モデルの「オンプレ」列を抜き出したもの。👤=自分でやる)
| レイヤー(層) | 何のこと? | オンプレでは |
|---|---|---|
| 物理ハード | サーバー機械そのもの | 👤 自分(買う・置く・壊れたら交換) |
| ネットワーク | 回線・配線・ルーター | 👤 自分 |
| 仮想化 | 1台を仮想的に分ける仕組み | 👤 自分 |
| OS | 土台のソフト(Linux など) | 👤 自分(更新も自分) |
| ミドルウェア | DB・Webサーバーなど | 👤 自分 |
| ランタイム | 言語を動かす実行環境 | 👤 自分 |
| アプリのコード | 自分が作ったプログラム | 👤 自分 |
| データ・設定・アクセス権 | 中身・鍵・権限 | 👤 自分(ここは他でも常に自分) |
🔑 全ページ共通の鉄則:どんなやり方を選んでも「データ・設定・アクセス権」は最後まであなたの責任。オンプレはそれ以外も全部自分、という極端な端っこにいます。
🛠 代表的なサービス(実名)
| やり方 | どんなもの? |
|---|---|
| 自社データセンター | 会社が専用の部屋・建物にサーバーをずらりと並べて運用。大企業・金融・官公庁に多い |
| 自宅サーバー | 自分の家にPCやサーバー機を置いて動かす。学習・趣味・小規模 |
| ラズベリーパイ(Raspberry Pi) | 手のひらサイズの小型コンピューター。数千円〜。学習の入口として人気 |
| さくらの専用サーバー / ハウジング | 機械を「物理ごと」貸してくれるサービス。場所や電源はお任せだが、1台まるごと自分専用で中身は自分で管理(≒オンプレに近い) |
🔧 「専用サーバー」や「ハウジング(自分の機械を業者の建物に預ける)」は、置き場所こそ借りますが、1台を丸ごと占有して中身は全部自分で面倒を見るので、感覚はオンプレ寄りです。次ページのIaaS(1台を細かく分けて“必要な分だけ”借りる)とは、ここが分かれ目になります。
👍 向いている / 👎 向かない
| 👍 向いている | 👎 向かない |
|---|---|
| 規制・データ所在地(どの国・建物に置くか)が厳しい(金融・医療・官公庁) | 小規模・個人・これから始める段階 |
| 特殊なハードが要る(GPUを大量に積む/超低遅延が命) | 立ち上げの速さが欲しい(今日明日に動かしたい) |
| すでに自前の機械・設備(既存資産)が大きい | 負荷が変動する(急に増えたり、夜は暇だったり) |
| 超大規模で、自前で持つほうが結局は単価が安くなる | サーバーの運用人員(守る人)がいない |
🟢 ざっくり:「動かす理由がよほど特殊・大規模・厳格」なときの選択肢。それ以外の多くの場面では、上のはしご(クラウド側)のほうが向きます。
💰 コスト感
- 初期投資が大きい:機械・回線・設置工事をまとめて先に払う(数十万〜数億円)。
- 固定費:使っても使わなくても、置いているだけで電気代・場所代(家賃)・冷却・人件費がかかり続ける。
- 隠れコスト=人:守る人・直す人・夜間当番。クラウドが肩代わりしてくれる作業を、全部自前で雇う必要がある。
- 規模が出れば単価は下がる:超大規模になると「借りるより自前のほうが1台あたり安い」逆転が起きることもある。小さいうちは割高、大きくなると効いてくる。
🟢 「初期に大きく払い、あとは固定費」。従量(使った分だけ)ではないのが、クラウドとの一番の違いです。
🔒 セキュリティ
- 物理を含めて全部自分で守る:建物の入退室、鍵、監視カメラ、火災・地震対策まで自分の責任。
- 自由だが重い:外部に預けない=情報が外に出ない安心がある一方、守る範囲が広く、抜けがあれば全部こちらの落ち度。
- パッチ(修正の当て直し)も、OSからアプリまで全部自分のスケジュールでやり切る必要がある。
🟢 「誰にも預けない安心」と「全部こっちで守り切る重さ」は表裏一体。守る人がいてこそ成立します。
🔧 長期メンテ
- EOL(End of Life=提供終了)対応:OS・ミドルウェアだけでなく、ハードそのものの寿命・保守期限も来る。数年ごとの機械の入れ替えが必須。
- 故障対応:ディスクや電源は必ずいつか壊れる。予備の在庫・交換手順を自分で用意。
- 当番(オンコール):障害は深夜・休日もやってくる。起きて対応する人を自前で回す。
🔧 クラウドなら「裏側でクラウドが勝手にやってくれる」部分を、オンプレでは人とお金と段取りで全部自前に置き換える、と考えると分かりやすいです。
🏢 誰が使う?
| ペルソナ | オンプレとの相性 | ひとこと |
|---|---|---|
| 大企業 | ◎ | 規制・既存資産・大規模チームがある。自社DC+一部クラウドの併用が定番 |
| 中堅ベンチャー | △ | 一部だけ自前にすることはあるが、多くはクラウドへ寄せる |
| スタートアップ | ✕ | 速度が命で運用人員もいない。まず選ばない |
| 個人 | (学習用に) | 実運用ではなく、ラズパイで仕組みを体験する入口として最適 |
📝 ことばメモ
- オンプレミス(オンプレ):自分の場所に機械を置いて動かすこと。
- データ所在地:データを物理的にどの国・建物に置くか。規制で指定されることがある。
- EOL(イー・オー・エル/提供終了):そのOS・機械のサポートが切れること。切れる前に入れ替えが必要。
- 当番(オンコール):障害に備えて待機し、呼ばれたら対応する役割。
- ハウジング:自分の機械を、業者のデータセンターに置かせてもらうサービス。
🟢 ひとことで言うと
オンプレは「小麦粉から家で全部作る」やり方。自由度は最強だけど、ハードからデータまで全部が自分の責任で、初期投資も固定費も人件費も自前。規制・特殊ハード・既存資産・超大規模といった理由があるときに光ります。多くの人・多くの場面では、次ページからの「借りる」選択肢のほうが軽くて速い、と覚えておけば十分です。